泡沫

そんなこととか 君のこととか

2021.02.22

今朝、目覚めたら目が痒かった。あぁついに今年もやってきてしまったなと思いながら目をこする。ここ数日は春みたいな天気で、もう何年目か覚えていないお気に入りのシャツを着て外へ行けるのが嬉しかった。少し走ったら汗ばんだことにすらウキウキしたし、近所のおばちゃんと「あったかくなってきましたね。」なんて些細な会話にも和んだ。嫌なことや寂しいことがあるぶん、日常の一瞬のきらめきをこぼさずに掬いとっていきたい。こう思えるまでに1年もかかってしまったな。

今日、少し芽が出始めたチューリップを3つ買った。本当は水耕栽培をしたかったけど、ちょっと、いやだいぶ時期が遅かったみたい。ホームセンターを2つまわって「チューリップの球根って売ってますか?」と園芸の店員さんに聞いたら「秋頃にはあったんですけど…。」と言われてしまった。なるほど。チューリップは花を咲かすまでに2つも季節を越えるんだ、と心の中でうーんと唸る。春に咲くから、冬のうちに植えるものだと勝手に思い込んでいた。知らないことばっかり。

家に帰ると花粉は気にせず部屋の窓を全開にしてベランダを掃除した。水耕栽培は諦めても、自分の部屋から見える場所で育てたかった。掃除を終えると買ってきたままの黒いビニールの鉢から深さのある白い鉢へと植え替えた。この植え替えが思ったよりも時間がかかって、不手際で根っこが見えてしまって焦ったりもした。まだ小指の爪ほどの芽なのに、こんなにもたくさんの長い根が生えているんだと驚く。空には飛行機雲、手元からはずっと土の匂い。そういえば肥料を買っていなかったな、どんなものが合うんだろうと調べているうちに辺りは暗くなり始めた。明日からはきちんと早起きをして水やりをしなくちゃ。芽が伸びて、蕾をつけて、花に会える日を楽しみに。身の丈に合った、ささやかな幸せ。

 

瞬きをする間に / LOSTAGE